夏休み最終日
彼との別れの日は
見事なまでの快晴だった
飛行場まで見送り
他の友達もいっぱい来た
誰にも言わなかったらしいんだけど
どこからともなく情報が来たらしくて
宿題が終わってないっていう人も来た
優しい彼
皆そんな彼をわかっているんだね
「神戸に行ったからって忘れんなよー!」
「たまには遊びに来てね!」
いろんな言葉が飛び交う
彼も、すごく嬉しそう
私は、遠くから見守っていた
というより、なかなか近づけなかった
最後に話せればいいかなぁ・・・なんて思ってたら
「よし!皆、撤収!」
と言って、ぞろぞろ帰っていった
「えっ!あの!ちょっと・・・」
なんで?と言わんばかりな顔をしていたら
「麻緒だけは残るんだよ?」
と桃子に言われた
他の人もこっちを見て微笑んだ
やっと意味が分かった
皆の気遣いが嬉しくて涙が出そうになった
「おーい!室井と最後に思い出作っとけよー!」
男子の1人が大声で叫んで
「うっせぇよ!」
と彼が反論
皆が大爆笑
恥ずかしくって
私は顔が真っ赤になった
待合室で椅子に腰掛けて
何も言わず、一緒にいた
その沈黙が苦しかったけど
ここは何も言わないほうが正しいと思ったから
「・・・最後にお願いがあんだけど。」
と彼が呟いた
「・・・何?」
すると照れくさそうに頭を掻いて
可愛い顔して言った
「その・・・大したことじゃないんだけど・・・『麻緒』って呼んでいい?」
最高に愛らしいお願い
拒む必要なんて全くない
「いいよ。」
さっきから赤らんでいる顔で微笑んで見せると
彼も笑った
「・・・麻緒。」
すっごく甘くて、くすぐったくって
でも、すぐ後ろで待っている別れに気づいて
また泣き出してしまった
あなたの前では、泣いてばっかりだね
「絶対に会いにくるから・・・。約束する。」
「うん・・・。」
優しく頭を撫でる手
大好きな手
「あの・・・。」
「何?」
「もう1回、呼んで?」
「・・・麻緒。」
「・・・もう1回。」
「麻緒・・・。」
溢れる涙
止まんないよ
「・・・俺の名前も、呼んで?」
ちょっとためらって、呼んだ
「・・・翔・・・。」
「・・・麻緒・・・。」
そして、どちらからともなく、キスをした
飛行場を出て、空を見たら
すらっと伸びた、白い飛行機雲
眩しかったけど
頑張って見た
待ってくれていた桃子を見つけて
彼女の元へ走っていった
ねぇ、私、寂しくないよ
だって、気づいたから
私達は、大好きな海で、どこでだって繋がってる
遠い日の約束
あれから3年
大学2年生になった
彼とは、1度も会っていない
手紙を送っても返ってこない
電話をしても出ない
忘れちゃったのかな・・・
どうしようもなく悲しくて
寂しかった
だからといって他の人とは付き合う気にもなれなかった
私は忘れられないよ
だって、あなたしか居ないんだもん
夏になって
急に電話がきた
「連絡できなくてごめん・・・。その・・・借金とかで大変で・・・。」
「ううん。いいよ。良かった。忘れたかと思った・・・。」
泣いて声があんまり出なかった
「今年の夏、会いに行くから。待ってて。」
どこでって?
言わなくてもわかる
私達の出会った海で
いつでも待ってるよ
きっと、あの日のように
ひょっこり現れるんだろうな
ほら
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