「9月に神戸に帰るぞ。」
6月のとある朝、親父に宣言された
5月に母さんとの離婚が正式に成立
別に2人の問題だし、悲しいとか思わなかった
近くのマンスリーの部屋を借りて親父と2人暮らし
そして、実家である神戸で仕事が決まった
騒がれたくなかったから
誰にも言わなかった
もちろん室井にも
教えたら
同情で一緒にいてくれるかなとか
ずるい事考えたりもしたけど
諦めたほうがいいだろう
そう決心した
4月からあいつのことを知って
時々外を眺める姿が
すごく可愛くて、素敵で
一目惚れだった
自分で言うのもなんだけど、かなり恥ずかしがりで
恋とかしても、誰にも言わない
バレないように、バレないように
想い続けた
夏休み前
これが最後だと思って
帰る彼女の後ろ姿を
静かに見守った
んで海の家に行ったら
会っちゃうんだもんな
ほんと驚いた
同時にすごく嬉しかった
これはチャンスだと思った
普段無口なのは、しゃべるのが好きじゃないから
話題を出すのも乗るのも面倒で
極力しゃべらずにいた訳だけど
いざとなって
これが癖になってて
上手くしゃべることができなかった
緊張してるのが目に見える彼女より
確実に自分の方が緊張してた
でも
あいつも海が好き
それだけで心が繋がってる感じがした
日に日にどんどん仲良くなっていって
本当に幸せだったんだけど
別れの日を思うと
苦しくなった
このままだと
俺、あいつの事もっと好きになる
手放せなくなる
何度も通うのをやめようと思った
けど、海の家へ向かう足を止められなかった
沖縄旅行は
多分あいつが来るって知らなかったら
行かなかったと思う
お陰ですごく楽しい思い出ができて良かった
最終日
河口に告白された
断ろうと思ったけど
「少し、時間くれる?」
考えることにした
これが潮時かもしれない
他のやつと付き合えば
あいつを忘れられるかもしれない
そう考えた
旅行の後
しばらくあいつは来なかった
気がつけば
夕方遅くまで待ってた
駄目だ
もう手遅れだ
あいつが愛しすぎる
友人に頼んで河口に連絡してもらって
海に来てもらうことになった
「・・・何?」
おずおずと尋ねる河口
すまない、と心で唱えながら言った
「ごめん。俺、好きな奴がいるから。」
また暗くなるまで待ってたら
遠くであいつが襲われていた
走り寄って
思いっきり殴ってやった
こいつを悲しませるなんて
俺が絶対に許さない
死んでも許さない
アザが痛んだけど
彼女の気持ちを知って
痛みが吹っ飛んだ
元気がでて
何でもできるとさえ思えた
もう
諦めようとか、考えない
不器用な俺だけど
俺の全部で
愛そうと誓った
最後の日のあいつの浴衣に
美しく咲いていた朝顔の花
今でも目に焼きついている
|