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10  ココナッツ
更新日時:
2006.09.15 Fri.
戻ってきた
 
いつもの海の家
 
そして
 
彼の隣へ
 
 
ところが
 
行きで聡美ちゃんと会った
 
 
「聡美ちゃん。おはよう。楽しかったね。沖縄。」
 
「室井さん・・・あのさ、彩から聞いたんだけど。」
 
「うん?」
 
 
「室井さんも・・・好きなの?」
 
 
瞬時に
 
北風が通ったかのような
 
寒気がした
 
 
黙った
 
 
「あのね、最終日にね、あたし告ったの。」
 
「?!」
 
 
言葉が出なかった
 
大きな絶望感に襲われた
 
 
「少し時間をくれって言われたから、まだ結果は分からないんだけど。」
 
彼女の言葉が、聞こえてはいたけど頭に入らなかった
 
「ねぇ、室井さん。」
 
改めて言われて、はっと我に返った
 
「あたし、室井さんが好きでも、譲ろうとか、思わないから。許してね。」
 
 
彼女は決してふざけてはいなかった
 
真剣に勝負しようと
 
目が訴えていた
 
 
「うん・・・。」
 
そんな彼女へ対して、私は抜けた返事しかできなかった
 
 
彼女と別れて
 
途中まで来たけど
 
やっぱり今日は行く気になれない
 
 
振り返って
 
元来た道を歩いた
 
 
彼女に勝てるなんて
 
はなから思ってない
 
でも
 
だからと言って
 
諦められるものじゃなくなってる
 
この気持ち
 
 
「おい。室井。」
 
前から
 
彼がこっちへ向かって来た
 
全然気づかなかった
 
 
「今日は行かないのか?」
 
「うっうん・・・。」
 
「なんで?」
 
 
行けない事情が特にあるわけでもなく
 
私は彼の質問に答えられなかった
 
 
それどころか
 
さっきの衝撃が今になって出て
 
涙が零れ落ちた
 
 
「悪い・・・ごめん。言えないなら無理に聞かないから。」
 
そして私の頭を撫でた
 
「じゃぁ気をつけて帰れよ。」
 
 
彼が私を通り過ぎたとき
 
ほのかにココナッツの香りがした
 


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